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理系数学の学習法(入門〜基礎編・2024年更新版)

大前提

理系でも計算が遅いやつはいるので練習せよ

理系を目指している生徒にありがちなのですが、「私は数学は(文系の連中より)そこそこできる」と言う自己イメージのせいで、計算の遅さに自覚しづらいのです。

文系数学の学習法(入門編)に、数学弱者が見逃しがちな典型的なポイント(計算・解法暗記)について解説してありますので、理系なのに数学が大してできない、という人はこちらを先に熟読してください。下の画像から飛べます。基礎計算の部分以外は、進める問題集や参考書はこちらのページで紹介しているものでOKです。

入門編へのリンク

理系でも文系範囲のみでOKの場合もある

理系の数学と言っても、理系だからといって数学Ⅲまで必要かどうか限りません。目指す大学によっては文系範囲のみで良い場合がありますので、その場合には文系数学の方を参照してください。

例えば、国公立なら中堅以下の農学部、看護・医療(医・歯学科除く)の分野、私立ならそれに加えて薬学部が、文系範囲の数学のみで対応できる場合が多いです。国公立薬学科(静岡県立大)・歯学科(長崎大)の一部の大学は英語や理科だけで二次試験を受験可能です。

他にも、大東亜帝国以下の偏差値の私大だと理工系の学部でも文系数学までで受験可能な場合がほとんどです。まずは調べましょう。そして該当する場合には、ここで紹介されている教材を使いながら、文系範囲の学習だけ進めてください。

まずは文系範囲

あなたが高1ならば、インプットする量を増やす

理系は数学で差がつきます。数学ⅢC全範囲まで必要な場合、さらに差がつきます。そして、ほとんどの理工学系の大学では、数学ⅢC全範囲(データの分析・確率統計は除かれることが多い)を記述で必須受験科目としています。

このため、数学についてはなるべく万全にしていきたいため、解法暗記インプット用の問題集は、なるべく網羅性の高いものを用意して欲しいです。具体的にはチャート式やFocus Goldといった、分厚い問題集です。学校で買わされることも多いでしょう。

ほとんどの場合は学校で配られるもので十分です。ただ、時々オーバースペックなものを配布されてしまい苦しむ場合があります。その場合でも、以下に示すような態度で解法暗記に徹することが大切です。 

本当に無理そう、ということであれば、文系数学の学習法(入門編)を参考に、基礎計算や問題数の少ない基本の参考書をやり直してみるのが良いでしょう。

高2生・高3生・浪人生ならば…

あなたが今、高校2年生、3年生、あるいは浪人生であり、3月を過ぎた時点でこれを読み、「チャートで頑張ってみよう!」と思っているのなら…

チャート・フォーカスを使うのを考え直してください(真顔)

高校1年生、あるいは2年生でも夏ぐらいまででしたら、こういった網羅型問題集を、学校の進度に合わせながら、その手前の範囲も復習していく、ということはできると思います(できそうにないな、という人は本項目の説明を参考にしてください)。

ですが、これまでチャートやフォーカスをろくに使いこなしてこなかった(使いこなしていたら、今ネットを彷徨ってこの記事に辿り着いてはいない)場合には、あと1年〜1年半あったところで、使いこなすまでには至りません。なぜなら、他の科目との兼ね合いで、数学ばかりやれる時期がもうほとんどないからです。国公立志望の受験生だけでなく、私立理系志望であっても、英語や理科で得点率を高めるために時間を持っていかれます。

この記事を読んでいる時点で、あなたはこちら側の人間だと思った方が良いでしょう。そのため、以下に示すような、コンパクトで全範囲を復習できる問題集を先にやった方が良いです。

松田先生のtype100を、教科書による復習とともに進めてください。このレベルの問題集は他にもありますが、私が松田先生のtype100を進める理由としては次のような特徴があるからです。旧課程版で整数が載っていたり確率統計の範囲は扱っていませんが、そこは飛ばしたり教科書レベルで十分です。

  • 懇切丁寧ではないが、必要なことは書かれているよう工夫されている。
  • この本に書いてないことは、教科書で補えるレベルである。
  • 例題(type)と練習問題(practice)のレベル差が大きい項目も、pointの内容を押さえていれば必ず解けるように設置してある
  • 解説が、そのまま答案に使えるレベルでコンパクトなものが多い。この解答のおかげで、理屈を追いかけられない解き方をしている生徒が炙り出せる。

同レベル帯の他の問題集は、丁寧に書き過ぎていて具体的すぎるのです。数学は抽象度の高い科目のため、なるべく抽象的に考える=多くの問題に共通した考え方を覚えていく必要があります。

そのため、数学のコンパクトな教科書と、このコンパクトな問題集で、多くのことに当てはまる知識を習得し、実際にそれを別の問題にも当てはめられるように頭を鍛えてください。

数学ができない原因

できないのは、覚えてないだけ

数学ができないのは、覚えてないだけです。いや、覚えてるよ、と思うなら、以下のことについて「感じ」と言う語を使わずに、厳密に説明してみてください。

  • 方程式を「解く」とはどういうことか/方程式と関数の違いは?
  • 三角関数の和積と積和の公式の導出(三角関数の加法定理は自明とする)
  • 条件付き確率の定義は?/どうしてあの公式で導出できるか
  • シグマ計算の証明

こう言ったものを、ほとんどの人は、定義の言葉自体を丸暗記しようとしているので、自分の頭に決して根付くことなく、綺麗さっぱり流されてしまいます。内容を理解せずに丸暗記してるのは逆にすごいです。全部教科書に書いてありますけどね。

丸暗記では決して頭に入らないのは、自分が頭にしまいやすい説明する用語の選択を吟味せずに丸呑みしようとしている感性的な部分と、その論理や理屈を同時に頭に入れたりしないという手続き的な部分の、2つの問題があります。

知らないことや、知らない道具は閃かない

自分の言葉で説明する=練習している中で、自分が自然に出せて意味を捉えやすい言葉・用語・式で説明する

定義や解法を正確に暗記するためには、意味が同じでも、自分の捉えやすい言葉で覚えた方が良いです。例えば、「nは自然数とする」を記述する場合に以下のように言い換えたって構わないのです。

  • nは正の整数とする
  • n > 0, n ∈ Z
  • n ∈ N

数学の指導をしていてよく聞く質問の1つが、例に挙げたような私の説明に対して「この書き方でもいいんですか?」です。もちろん良いのです。

当然、相手のレベルによって書き方は変えてますが、理系の生徒であっても、答案の書き方については無頓着なことが多いです。無駄な書き方(計算の無意味な羅列など)や、自分で間違いを誘うような答案運びをしてしまうこともあります。

教えられた(あるいは模範解答に書かれた)コトバ以外を書くことを怖がってしまい、覚えたことを覚えた通りに出そうとしたり、覚えたままのコトバで説明されてないので問題が解けない、などということはよくあります。

当然、覚えた言葉が自然と頭から出てくるぐらいは反復なり音読なりする必要がありますが、自分の頭から自然と出てくる言葉で説明可能にしておかないことには、試験中に数学の問題が解けるようになんて絶対にならないでしょうね。

そういう意味では、数学は「詩」のような文学的・情緒的側面があります。

確かに、数学に限らず、あらゆる学問は「言葉」を適切に吟味することが必要です。誰もが、適当に言葉を使っていたら、論理的なコミュニケーションは取れません。用語の意味を正確に理解し、意味が射程圏内からズレないようにしていく必要があります。

このことと「定義を正確に暗記するためには、意味が同じでも、自分の捉えやすい言葉で覚えた方が良い」ということは、矛盾しません。言葉がさす意味を共有できているのならば、射程範囲内のことを指している限りは、伝えるための語彙が多少変わったところで、伝わる意味は変わら無いからです。むしろ、言葉の射程範囲を正確に理解することが必要なのです。

覚えたことをそのまま吐き出すのは、頭を使った学習ではありません。抽象度の高い内容を、「適切な言葉」を吟味しなければ正確に表すことはできません。まして、採点者は大学の先生ですから、不用意で適当な言葉遣いは減点対象です。

自分が覚えるべきことが覚えやすいように、自分が伝えるべきことが伝わりやすいように、丁寧に語彙選択をしていくことがとても大事なことです。

(これ、数学の話ですよ!どっか行かないでね!)

解法暗記は、典型問題の解き方を、自分の言葉で説明できるようにすること。

解法暗記は、一言一句暗記していくことでは「ない」

上の項目と似たような話になりますが、解法暗記をしろと言うと、問題文と解答例をそのまま一言一句全部暗記していく人が跡を断ちません(そういう人は、なぜか社会とか理科とかそういう暗記が必要なものはそういう暗記の手間を惜しんで結局何もできなかったりする)。

解法暗記をすることで、その問題および解答で説明されている論理を理解しながら覚えてもらわないと、「似たような別の問題」に永久に対処できません。

ここを勘違いしていると、永久にさまようことになります。で、勘違いして勉強してうまくいかなかった人が「解法暗記なんかしても無駄」と言うことがあり、だいたいそう言う人は、個人的な失敗体験(そのほとんどが、暗記をしても解けるようにならなかった、と言う、自分の要領の悪さを棚にあげたもの)を嬉々として語りますから、あ、これはこの人の要領が悪かったんだな、かわいそうだな、と思ってくれれば良いと思います。

インプット教材の勉強の仕方

数学ⅢCの理系範囲について

数学ⅢCは教科書章末問題レベルも入試で聞かれる

数学ⅢCは、学校で始まる時期が遅いせいもあって、入試問題をいきなり解き始めることが多いです。しかし、地方国公立や有名私立大だと、教科書の章末問題に載っているようなレベルの問題がそのまま出されたり、定義がそのまま問われたり、教科書に丸ごと載っているような証明をさせられたりします。

このため、数学Ⅲの範囲は、下手に課題で出される以外の入試問題に手を出す前に、まず教科書の例題・練習問題と節末・章末問題を全て完璧にしておくことをお勧めします。

数学3は教科書レベルを徹底してインプットすることを優先せよ

上に挙げたとおり、数学3については無理に網羅型問題集を利用せずとも、教科書レベルを中心で良いのですが、実際の入試問題を使ってもらっても同じことだったりします。なので、以下の問題集を教科書の章末問題までの変わりとして使ってもらうのも良いでしょう。教科書とはまた違った基礎の捉え方ができます。

コンパクトに復習する教材

特定の分野が苦手などの大きな抜けはないので、全範囲を短期間で復習したい場合にオススメの教材が、松田先生のtype60です。解説が簡潔すぎる、という指摘があるのですが、「アウトプット=実戦練習」の中で必要になる「論理的に思考する」ことを要求してくる作りになっています。懇切丁寧ではない分、ある程度できている人の伸び悩みを解消する素材になると思います。旧課程のⅢなので、現行課程のⅢC理系範囲を扱っています。

網羅型問題集の注意点

もし、数学ⅢCに達した時点で時間的に余裕があるのなら、「網羅型の参考書」をやって欲しいですが…。ここで注意事項を。

  1. ほとんどの場合(東大レベルが目標の場合でも)、計算練習、公式のインプット後、黄色チャートをして、入試問題演習をするので十分。私も最初は黄色チャートで授業と並行して学習を進めていました。
  2. 最近の傾向として、学校で「一斉に=全生徒に」配布する、または購入させるものは「上位の生徒=学校が合格実績の看板に使いたい生徒」向けのことがほとんどです。その学校のボリュームゾーンの生徒にとっては、問題の難易度が不適切な場合が多いです。生徒全体のレベルが高い=選抜性の高い入試が実施できている学校は例外。
  3. つまり、学校で一斉に使っている青チャートや赤チャートをやる場合には、本当に理解しているか確かめながら、全体的に難易度が高くて無理そうな場合には(だいたい学校で使わされて課題にも出てるのだから手放せないので)文系数学の学習法で紹介している、コンパクトに全範囲を復習する問題集を代わりに進めること。
  4. Focus Goldなどの「全レベル網羅型」の場合、どのレベルを繰り返すのかで手間や到達点が変わるので、実力不足だと思う場合に、気合いや根性で全部をやろうとしない方が良い。やる問題のレベルを吟味して対応した方が良いです。

なので、特に数学ⅢC範囲については、無理にしない方が良いと私は思います。東大や京大を志望していても、網羅型参考書でなくても合格点まで達することはできます。

苦手な分野は侮らず、単元別参考書・問題集へ

これは過去問演習などとも共通するのですが、「苦手な分野がある」という自覚をしておきながら、網羅的な問題集を周回してそれを潰そうとする人が結構多いです。

苦手分野が苦手な理由の分析を適当にしている人は、そうなりがちです。

  1. その分野特有の考え方を理解できていない
  2. 典型問題・解法を覚えられていない
  3. 計算が遅くて間に合わない

このうち1である場合には、以下のような分野別参考書・問題集で丁寧に考え方を復習していくことをお勧めします。特に、確率・整数・数列・ベクトルなどのA/B分野は分野単独の出題も多いので、侮らない方が良いです。

アウトプットは、「自力で考えて解く練習」

アウトプットに使う問題集は、インプットに使った網羅型の問題集とは使い方が違います。使う目的が「試験で点数を取る練習」ですから、「わからなかったらすぐに答え見て解法暗記する」では、インプット教材と使い方が変わりません。

アウトプット教材の勉強の仕方

学校の中には、ボリュームゾーンの全員が必要なだけインプットし切れているわけでもないのに、いきなり入試問題演習に入ってしまい、生徒たちは解説を渡されないために、予習と復習にやたら時間がかかってしまいます。そもそも必要な解法を理解・暗記してもないのに、本番と同じように=何も見ずに演習させようとするからです。

こういった事情で、典型解法をインプットする練習を十分にできず、生徒の勉強センスに任せるしかない状態になっている自称進学校は少なくありません。自分の学校がこれに該当する場合には注意してください。

国公立型のアウトプット

インプットの網羅性と比べて、アウトプット型は、必ず「全範囲でコンパクト」なものを選ぶのが良いです。これは、過去問を中心にするという時間的な都合もありますし、「自力で考える訓練」ということを考えるなら、あまりに多すぎる演習問題量は毒になるからです。

原則、国公立型と私立型でやる問題集は変わりませんが、国公立の場合には国公立ならではの聞かれ方がやはりありますので、仕上げには過去問にプラスして、駿台文庫のCANPASSシリーズを併用することをお勧めします。

私大型のアウトプット

正直、国公立対策とさほど変わらないです。過去問と、以下のような典型的で標準的な理系数学全範囲の問題集を使うのが良いでしょう。問題のレベルや、解説のレベルが合っているかを確認して選んでください。

まとめ

理系で数学を二次試験まで使う場合には、数学で差がつく大学・学科が多いです。そのため、基本的な公式理解や計算練習はもちろん、解法暗記も網羅型の問題集で行うなどの「範囲の広い詰め」が必要になってきます。

さらに、そうして暗記した解法が試験中に問題なく時間内に出せるか、という検証・練習が必要です。これは他の科目と変わりません。

インプットとアウトプット、どちらも欠かさず練習することが数学では必要です。今やっている勉強がどちらのタイプか、必ず設定してから取り組んでください。

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