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物理の学習法(全レベル対応、2024年更新版)

物理に必要なこと=物理の考え方(世界観)を理解して、自分で説明可能にすること

物理はその世界観を理解するのがとても大切です。物理で習ったように世界が動いているかが真実である保証は、普段の生活ではとてもじゃないですが実感はできません。そのため、教科書でなされている説明が理解しづらい項目も少なくありません。

確かに、波動の縦波伝搬やスリット実験、ドップラー効果など、実験でいくつか確かめられはします。しかし、全ての分野の基礎となる力学が、慣性力以外はほとんど実感しづらいために、中学レベルの理科だとできていても、高校レベルになると途端に物理ができなくなる、という生徒は少なくありません。

物理を、感覚ではなく理屈で理解する

これは「自分の感覚」だけで物理を理解しようとしてしまうからです。身体感覚は人によって異なるため、物理的な現象の説明が、どうしても自分の身体感覚とフィットしない人も出てきてしまいます。

抽象的な思考に頭を使うことに慣れていない人ほど、そうした「身体感覚に根ざした理解」を求めがちです。自分の肉体感覚を通じて物事を理解することは大切です。しかし、そういう過程を、名前が残っている学者も残っていない学者も全員が、大昔に幾度となく繰り返し考察した結果として、現在の物理学に至っているわけです。原始的な理解だけで留めようとするのは、効率が悪いです。

また、若者の身体感覚は物理が発展し始めた頃と比べると大きく変わっていることも物理が理解しづらいことの理由の1つでしょう。体を動かす機会が大きく減っているのです。頭の働きを良くした人が有利になるような世の中になっていますね…。というのは置いておきましょう。

新しい学問を開発していく、という気概のある人なら別ですが、高校レベルの話では、大人しく巨人の肩に乗っていくことが、凡人である私たちには重要なのです。ただし、「その考え方、なんか違うんじゃないか」という違和感は大事にとっておいた方が良いでしょう。

数学と同じく「解法暗記」が超重要

もう一つ、数学と同じで「図の書き方」「立式の仕方」「解答の運び方」を身につけていかなければいけません。数学と違うのは、問題同士がよく似ているので推測が付けやすいのですが、一方で、場面が変わっても同じような式の使うため、その意味を明確に区別できるようになるまではとても苦労すると思います。

さらに、物理は数学と比べると出題パターン数が少ないため、どうしても解法のインプットとアウトプットをほとんど同じような問題でせざるをえなくなってきます。

数学の解法暗記とアウトプットの取り組み方を参考までに載せておきますので、同じ問題集を繰り返す場合でも、何回目なのか、とか、その目的によって取り組み方を変えてください。

(理科共通)難関大になるほど「読解力」が必要

理科全般について言えるのが、東大や京大をはじめ旧帝大・難関私大になってくると、問題文自体が難解になってきます。こうした大学の対策として、難問の定石を学ぶことはとても大事なのですが、大学側は、それを前提に、大学レベルの内容を高校内容で解かせてみる、高校レベルの考察で大学レベルの内容が導けるか(ただし、問題文でかなり詳しい誘導がある)、などを問われることがあります。

こうした問題への対処として過去問をやりこなすのは1つの解なのですが、ただやるだけ、解説を見て理解するだけでは足りません。「解答」だけを見て、違っている場合にどうしてそうなるのかといった「自力で問題文だけから説明する」という手順を踏み、本番で必要な思考過程を再現する練習をしなくてはいけません。そこに注意して、本番レベルの演習を行ってください。

具体的な参考書や問題集

インプットと問題演習をセットで行う

「ずっとインプットばかりしている」「ずっと問題演習ばかりしている」というのはやめましょう。それで適当に覚えているだけでは、本番で問題が解けるようにはなりません。

理解のためのインプット用の参考書・問題集を一通り終わったら、目標レベルの入試問題集にいきなり入って良いです。これは、物理は問われる内容自体は数が少なく、問題に対応した問題の読解をしなければいけないため、中途半端なレベルのものをやる意味があまり無いからです。

初学者向けインプット

物理を理解するための本は、数学と比べると数が少ないです。さらに、初学者向けのもの、と限定して探そうと思うとかなり少なくなってきます。

超初心者、あるいは苦手意識のある人には「宇宙一わかりやすいシリーズ」がお勧めです。初めてでもわかるような、文字の説明+イラストの説明を徹底しており、自力でも読みやすいです。またこの本は、為近先生(代ゼミの物理トップ講師の一人)が監修されているので、自信を持ってお勧めします。

宇宙一シリーズが子供っぽくていやだ、もっと硬派なものは無いのか、ということであれば、物理のエッセンスが良いでしょう。基礎的な問題で構成されているのですが、解説は、この本の後に「名問の森」などに接続できるように意識されて書かれていますので、基礎的ではありますがレベルが低いわけでは無いです。実際に、志望校が難関大ならば、この本のあとですぐに「名問」に接続してしまって良いです。

既習者の素早い復習のためのインプット

以下の2冊は、初学者がまず一周する、という目的ではなかなか使いづらいですが、自信のある人はやってもらって構いません。ただその場合、しっかり読み込むタイプの学習をすることになるので、例題や章末問題などがある場合は丁寧に取り組んでください。

既習者が、自分の理解の粗を探すために、演習前後で読んでいくためのものとして使ってもらうのがちょうど良いと思います。

物理が好き、自信のある人のインプットはこれを

高校生の説明だと、全てを説明してくれないところが多く、また、イメージや公式で詰め込ませがちになるので、より正確な物理の理解を進めたい場合には以下の2冊がお勧めです。実際に進めるのは、どちらかだけで十分です。微積分での解説を行う場合もありますが、該当箇所の数学の基礎と、上で説明した「世界観」を理解するための読解をしようとする気持ちがあれば読んでいけます。満足に読めないとしたら、まだこのレベルに至ってないと思って修行してください。

レベル・目的別問題集の紹介

中堅レベルまではこれ一冊を完璧にする+過去問

私立、国公立関係なく、この一冊を完璧にすることが中堅以下を志望する場合には欠かせません。ひとつひとつが説明可能で解けるようになるまで繰り返し、過去問10年分を用意して繰り返し演習しましょう。地方国公立大学やブロック大学志望の場合にはCANPASSを追加で使うのも良いでしょう。

準難関国公立〜旧帝大標準(九大・北大・東北大)

旧帝大や、地方大レベルでも医学科・薬学科など競争率の高い学部を目指すような場合には、名問の森を繰り返し取り組むのが良いでしょう。同レベルの問題集では標準問題精講があります。

難関大志望だが時間がない場合

もし、部活が厳しすぎるなどの事情で、入試の演習が満足にできておらず、本当に時間がない場合は、以下の問題集で、少ない問題数で難関レベルまで上げて行くことを目指してください。ただし相当キツイです。これとあとは過去問をやってなんとか間に合わせる、というのが突貫工事です。

明快解法講座は97題、最強の99題は99題、合計でも200題未満です。数学の解法暗記と同じ要領で、「図の書き方」「立式の仕方」「答案の書き方」まで事細かく理解して暗記して、繰り返し時間かからずにできるまでやり尽くしてください。

旧帝大など問題文が難解な大学

東大、京大などは問題文の設定を読み込むだけでも、物理の基礎力や言語の読解力のない人には時間がかかる問題になっています。そうした難解な問題の対策には、以下のようなハイレベルな、長い問題しか載っていない問題集をお勧めします。

もちろん、国語力に自信のある人は、上で紹介した問題集+過去問10年分をやってもらって構いません。そこは自分の国語力次第で使い分けてください。少しでも自信の無い人は、こちらの問題集で読解する力を鍛えましょう。この問題集の解説を読むのにも相当な読解力を要請されますが…。

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