大原則
大学入試でよく言われる「受験は暗記と要領」という大原則は、高校入試も同じです。
- 暗記:必要事項を説明可能になるまで覚える。丸暗記ではダメ。
- 要領:自分が解くべきレベルの問題に集中する。
高校受験こそ基礎知識に対する反射神経がものをいう試験ですから、反復が最も効果的な試験です。それぞれの目標に合わせて、最低限ここまで、というレベルの問題集を提示します。
これまで全く試験勉強なんてしてこなかった人で、これから勉強を始める人は一番入門から上げていってください。腕に自信のある人は、一番簡単なものからではなく、レベルに合わせて取り組んでも大丈夫です。
試験は「求められていること」に応えるもの
「試験」を「知ってるものを適当に書いて当たるか外れるか試すもの」と思っている人がいますが、それは間違いです。
試験は、問題文から要求されているものを読み取り、それに対応した答えを返していくものです。ですから、
- 問題文の意味を理解するための読解力
- 要求されているものに答えるだけの知識
- 時間内に解答するためのスピード
といったものが必要です。本番でない限りは、問題文が何を聞いているのか、意味がわからない、ということはハッキリ言ってしまって質問してもらって良いのです。意味がわからないのに、適当に返すよりはマシです。
こうした、何が要求されているのかわからず、適当に応えてしまう現象は、実は結構ありがちな現象です。こうした「適当に答える」ことをやめない限りは、宝くじが時々当たるのと同じように点数は上下しても、知的能力の養成に全くならないので、学力は全く伸びません。
適当に答えることが止められない場合
もし、やめなければいけないとわかっているのに、「適当に答えてしまう」ことをやめられない場合は、現在の環境(家庭や、学校など)などからくるストレス等の心理的負担から、落ち着いて目の前の文章を読めないという状況に陥っているということも考えられます。その場合、
- それでも受かる高校に進学する(しんどいのをやり過ごす)
- N中学などの通信制中学に転学して環境を改善する(環境を変える)
などの対策が取れるでしょう。また、年齢の変化とともに落ち着いてくる場合もあります。
説明できるぐらい、わかるまで理解する
高校入試の範囲では、どちらかと言うと「論理的な説明そのもの」よりも、「知識を因果関係や分類方法などで結んで、整理整頓して頭にしまい込む」といったことを要求されることがほとんどです。
というのも、説明を求められる問題ですら、歴史上の出来事の順番や、現象の因果関係を覚えておけば済む話がほとんどだからです。
なので、まずは説明に必要な用語そのものを正しく覚える。そして、その用語を使って問題の解答の説明を自力できるようになるまで覚え込む。このような順番になります。
結局、覚えてないから、点数にならない
中学生くらいだと、適当にやってもある程度覚えられてしまいます。さらに厄介なのが、適当に覚えているだけの人の中には、用語同士を論理的につないで覚え、難しい問題でも対応している人がいます。
しかしながら、それは誰にでもできる芸当ではありません。下手に真似をすると、勉強時間の割に全く伸びないということが起きます。なぜか? 同じように勉強しても、同じように覚えられるとは限らないからです。
結局、覚えてないのです。ああ、そうだったなあ、を何回繰り返しても、それが合格点になるぐらい「当たる」まで、適当に勉強らしきことをして時間を過ごしながら待つのです。それは勉強とは言いません。
用語を大量に正確に覚えて、何遍も問題文を読む練習を重ねて、確実に成果を出す、繰り返し学習、を行いましょう。
繰り返して定着
何度も繰り返して、完璧に説明できるまで覚え、忘れたとしても何度でも覚え直すことが、勉強の基本動作です。そのため、私が紹介する教材は、レベルを細かく分けており、1冊が薄く繰り返しやすい問題集を中心にしております。
地方の公立高校入試レベルであれば、ただ繰り返して覚えていくだけでも効果があります。
上位の進学校を目指す場合はそれだけでは通用しない場合もあります。公式や用語をどれだけ論理的に説明できるか、が問われていたり、高校範囲の公式を中学レベルの公式のみで証明させたり、と言った思考力を問う問題が多くなってくるからです。
しかし、こういった思考力を要求される問題も、正確な用語・公式の理解、正確で素早い計算、問題文の要求に対する反応、を積み重ねて対応していくものです。これらを正確に大量に身に付けていくには、繰り返し学習が最も効果的です。
私も実践しました
私は、中学3年生の初めの時点では200人程度の学年の中で、5教科合計で100番くらいでした。つまり、地方の公立中学で真ん中位の成績、と言う事は大して勉強のできる中学生ではなかったと言うことです。
あと数ヶ月ほどしかない、中学の残り時間では、勉強ぐらいしかやることがないのに、そこでたいした成果もあげられないのが悔しいと思い、いろんな勉強法の本を読んで参考にして、繰り返し学習を実践してみました。そうすると、みるみる順位が向上し、常に学内で3番以内に入るようになり県内でもトップクラスになりました。
繰り返し学習は、私が実践してきて、その効果も証明しています。現在では、誰にでも通用するように、人に合わせたやり方や考え方を編み出しています。
高校入試だけでなく、東京大学に合格するためにも、東大レベルの問題集を7回繰り返し、あらゆる知識公式を論理的に理解し説明できるまでやりこみました。また、各種資格試験にも有効な学習法です。
覚えられるまでやる、ただし…
こうした、繰り返し学習を基本としているため、覚えられない、答えられない、といった事は単なる繰り返しの不足や、頭を使って覚え込まずに繰り返すことが目的(手の運動にしかなってない)になっているからであると、私は考えています。
最初に申し上げました通り、目の前の文章を落ち着いて読むことができない、適当に答えるのがやめられない、と言った場合は、そもそも勉強以前の問題である可能性があります。
しんどい時に、しんどいと声を上げることも1つの強さです。もし、自分がそうだと心当たりがあるのならば、医療機関などに相談に行ってみましょう。
勉強するのが「はじめて」のレベル=基礎がため
もし、あなたが中学3年生で、12月にもなってまだ勉強してません、どうすれば良いでしょうか、と駆け込まれても、私にはどうすることもできません…。
ただ、それが半年前や一年前であれば、まだ挽回は可能です(どの高校でも受かるとは言ってない)。その場合にお勧めするテキストは、以下のような超基礎からやり直していくタイプのものです。
どうしても点数が半分も取れない、苦手な科目がある!という場合もこのレベルからやり直してください。
理科・社会・国語は「ひとつひとつ」シリーズ
まず知識を整理することが必要な教科は「ひとつひとつ」シリーズで丁寧に基礎固めを行ってください。その後は多くの中学校で配られる入試用問題集を繰り返していくのが手っ取り早いでしょう。
英語:単語や文法を音声+文章で詰め込む
もし本当に英語全く勉強したことがないならば、高速で大量に英語を聞いていく勉強法をまずやっていくと良いでしょう。英語は、覚えるべき英単語をまず大量に高速で叩き込んでインプットしてしまうことが必要です。
その上で、例文暗記を使って、英語構文(英文法)、英単語・英熟語を強化していきます。すべての例文を、使われている文法も含めて、意味がわかるまで覚えてください。ここまでできれば後は入試問題を通して長文などをどんどん読んで話がわかるか確かめてください。
数学:「計算」と「分野や公式の理解」に分ける
大学については何はともあれ計算力の養成が必要です。しかしながら、中学数学が苦手な人のほとんどは、分数や小数の計算、3桁の掛け算や割算といった、超基本的な小学校高学年レベルの計算がそもそも遅いとか、苦手とか、間違えると言うレベルであることに注意してください。
そのため、まずは小学4年生レベルの計算ドリルを毎日やるところから初めてください。1冊が1週間ほどで済むと思いますから、4年生、5年生、6年生の計算ドリルを毎日やって最低でも3週間かけてください。例に挙げたものは解説が詳しいものですが、どんな計算ドリルでも構いません。
また、その上で、中学レベルの数学の分野の考え方や公式を再度入れ直していきます。ここでは「問題集」と「参考書」を並行してやってもらうのが効率が良いです。問題集を解きながら、わからない分野の考え方を参考書で入れていく、という順番が良いでしょう。もちろん、全くわからない、覚えてない、という場合にはまず読んでからの方が良いでしょう。
こうした参考書と、以下のような問題集を組み合わせてください。この段階であれば、学校で配布される入試用問題集でも構いません。
基礎がためを済ませ、入試に向けた演習へ
公立高校入試で、そこそこの点数が必要な場合
このレベルを目指す場合には、上で挙げているような基礎固めができている場合には以下の問題集に進み、そうでない場合はまず基礎固めから始めてください。
というのが、ほとんどの中学生は、そもそも勉強の仕方がよくわかっていません。高校に進学してからも、いまいち勉強の仕方がわからずに、ただ何も考えずにひたすら暗記をしたり、見覚えのある問題しか解けない、となりがちです。
高校進学後も定期試験や、実業高校であれば資格試験の勉強など、暗記や問題を解いていく要領が必要となってくる場面が多いでしょう。高校入試が、そういった暗記や要領を鍛えていく良い場ですので、活用してほしいという思いがあるからです。
「過去問」をやるのは、実力チェックをする場合です。普段から点数を取れてない人が、一通り、全範囲の勉強+周回をせずにいきなり過去問をやっても、「できてない」という結果がわかるだけで(当たり前ですが)、何のプラスにもなりません。
必ず、先に一通り全範囲の勉強をやり切る、ことを守ってください。なお、目標とするレベルによりその「一周」にかかる分量や時間は全く違いますので、なるべく早くスタートを切ることをお勧めします。
目標問題集は「落とせない」シリーズ
こういったレベルの高校に受かるためには、誰もが解けるはずの問題を、試験時間内に解けきれれば良いだけです。例えば地域トップの進学校を目指すような連中が解けなければいけない問題を解く必要は無い、と言うことです。
そのため、以下のような正答率が高い入試問題に絞って対策ができる問題集を最終的に繰り返すことにしてください。もし、対策していく中で特定の分野が苦手だと言うことがわかれば、基礎固めに戻ってやり直してください。
もう少し点数を取りたい人のために
中学生ぐらいだと、読解力がある程度高く、人よりも難しい問題が自然と解けてしまうため、基礎的な問題を少し落としていても全体の点数がそこそこ高いため、ろくに勉強もせず乗り切るタイプの人もいます。
一方で、逆転合格を狙う場合には、逆のアプローチをします。つまり、誰もが解ける問題をきちんと解くことを優先し、余らせた時間で難しい問題を少しでも解いていく、という戦法です。
難しい入試を出される高校に進学するからといって、難しい問題が全部解けるようにする必要は無いのです。
点を追加して取るための「差がつく」シリーズ
「落とせない」だけだと心配で、点数をもう少し取りたい場合には、同出版社の「差がつく」シリーズを追加しましょう。
この問題集は、全国の公立高校入試問題で正答率が50%を切る問題だけを集めたものです。各分野で数問ずつしかありませんが、まずは全体にわたって自分が応用レベルになるとどの分野ができないかを確認してください。
できない分野を確認しながら、この問題集そのものを繰り返すことと、「落とせない」シリーズや学校でもらっている参考書に戻り、基本的な知識や公式を正確に覚え直すことを徹底してやってください。
中堅レベルの進学高や高専志望の場合
中堅レベルと言うのは倍率が1〜1.5倍くらいまでの高校を想定しています。このレベルでも、難問ばかりを解ける必要もなく、堅実な勉強をしていれば受かるタイプの学校です。
今までのレベルと違うのは、基礎の徹底度合いです。落とせないシリーズだけではカバーできない範囲まで扱うために、基礎的ながらもさらに詳しいタイプの問題集に変更していきます。
目標問題集は「差がつく」+「総合的研究問題集」
応用問題に対応するために、「差がつく」シリーズを行う事は変わりません。また、入試の過去問に早くから触れて、その問題形式に慣れてください。
一方で、基本的な部分の問題集を「総合的研究問題集」に変更して、基礎の部分をさらに強化していきます。
また、これまでと同様に「過去問」による実力確認も定期的に行ってください。
倍率2倍以上になる県立進学校入試
このレベルになってくると、公立高校でも、共通の問題に加えて、独自の問題を用意している学校もあります。しかし、配点的には共通問題が大半です。そのため、まずは、誰もが解ける問題、標準的な応用問題、こうしたものが解ける状態にあることが大前提です。
超難問を解けるようにする必要はあまりない
実は、問題集のセットは今までのレベル(中堅高校レベル)と変わりません。独自問題がある場合には、下に挙げているようなハイレベルの問題集が必要になる場合もありますが、ほとんどの場合は過去問演習で対策できます。時間的余裕があれば取り組んだ方が良い、というレベルです。
同レベルの問題集を何冊か並行して繰り返して、解答の精度や速度を上げていく
必要となってくるのは、これまで紹介したレベル帯での正答率の高さ、および解答の速さです。
というのが、このレベルになってくると、合格の当落線上にいる人たちが大勢いる入試になります。つまり、数点の差で数10人が落ちたり受かったりが変わる入試です。しかも、問題のレベルは、他の公立高校とほとんど変わりがないのです。
このため、基本的な問題で、1点2点を落とすようなことをしていては、いくら応用問題で点数を取ろうとも、落ちてしまいます。
1点2点を争う、1分2分でも素早く、そういったことが要求されているテストです。毎日の問題演習や、毎月の実力テストなどで、自分が足りない部分を正確に分析し、そこを補うような基本的な内容の学習を徹底して繰り返すことが必要です。
ハイレベルの高校入試対策
超難関高校(西大和や愛光など、二番手の高校)
超難関高校では、当たり前ですが超難問が出てきます。しかし、全てが超難問と言うわけではありません。また、難問といえども、基礎的な知識や計算の正確さがなければ、そもそも解くことができません。
このため、基本を徹底する事はこれまでのレベルと変わりませんが、追加で難問題が詰まった問題集を用意して、さらにそれを繰り返すと言うことが必要です。
「総合的研究問題集」+「上級問題集」
基礎の問題集は、「総合的研究問題集」で問題ありません。この問題集に対応した参考書がありますのでそちらも入手して、しっかり読み込むようにしてください。
難関の問題集としては、「上級問題集」を推薦します。問題が難しいと言うだけではなく、解説が文章で丁寧に書かれており、かなり詳しく、本番で要求される読解力や集中力を鍛えるのに向いているからです。
「上級問題集」にいきなり向かうのがきつい場合は、「差がつく」シリーズをやってからでも構いません。このレベルに向かうにあたっては、「差がつく」に載っているようなことは頻出パターンレベルですので、そこがほとんど抑えられてないようならこのレベルはきついと思います。
灘・ラサール・男子御三家・女子御三家レベル
このレベルになってくると、情報戦になっています。こうした高校の入試を受ける層は、特定の塾所属者がほとんどです。大手の進学塾であれば、そうした情報収集も強く、入試の傾向や補修人数の変化など細かく情報が入ってきます。
一方で、わからないところをわかるように、など、自分の実力を細かく上げていくためには、少人数指導の小さい塾に通う方が合っている場合もあります。
このため、超難関高校志望者の中には、大手と少人数塾と兼塾する場合も少なくありません。
もしあなたが、このレベルの高校を目指したいと強く願うのならば、自分の適性や、勉強に対する意欲を見ながら、集団授業や自習で伸ばしやすいのか、直接教わった方が伸ばしやすいか判断して、塾を決めていく必要があります。
なるべく、ライバルが通う塾へ
塾に行かずにこうしたレベルの高校を目指す事は、現実的ではありません。
現在は地方都市でも、ウイングネットや東進中等部NETなど、大手の指導教材や映像授業を用いて勉強できる環境が整っている場合もあります。また、一部の地域では、地元でそういった子たちが通う塾があります。
必ず、ライバルが多く通い、研鑽された指導が提供されている場所を選びましょう。
なぜなら、そんなにがんばらなくても自分が一番であるとか、トップクラスであるという環境に甘んじていては、このレベルの高校には到底受かりっこないからです。
1・2年生のうちに「ハイステージ」シリーズや「総合的研究問題集」「理科・社会の用語集」で基礎固めをしておく
さて、そうした塾に通っていただきながらも、学校での日々の課題や塾の課題に加えて問題集も取り組んでください。1年生2年生のうちから、入試に向けた基礎固めを固めていくことを強くお勧めします。
特に、英語・数学において、中高一貫校の子たちが使うような教材は、高校範囲のことを意識した内容になっており、このレベルを目指す子たちの基礎固めとしては最適です。おすすめは「ハイステージ」シリーズです。
その他の科目は、これまで紹介した中では、総合的研究問題集が基礎固めには最適です。参考書もセットで、2年生が終わるまでにどの問題も完璧に仕上げてください。
また、理科・社会は用語1つ1つの意味を丁寧に用語集で確認しながら問題演習をしていってください。学校の授業の時間も、こうした用語集はコンパクトで持ち込みしやすいので、合間にどんどん読み進めていってください。
「上級問題集」「塾技」「図でわかる」「難関徹底攻略」「高校への数学」などで中学範囲を超えたレベルに対応する
受験学年になってからは、「上級問題集」は当然ながら、「塾技」「高校への数学」といった超中学レベルを扱う問題集を徹底的に繰り返して行いましょう。
また、「図でわかる」と言ったような、中学で扱う理科の概念をもっと一般化して高校レベルまで見えるような捉え方をしていく必要もあります。なぜなら、扱うレベルが中学範囲を扱っているように見えて、それだけに留まらないからです。
まとめ
本来は、もう少し細かくレベル分けをしてレベルごとに記事を作るべきだと思っていました。しかしながら、こうして最上位の高校入試レベルの勉強まで記載することで、地方の公立高校受験の世界しか知らない中学生たちに、全国でもトップクラスの高校に入るためにはどういう努力が必要か分かってもらえると思って、こうした構成にしました。
しかし、お分かりいただけたと思いますが、使用する教材のレベルが異なるだけで、要求される事は結局のところ以下の3つに集約できます。
- 問題文の意味を理解するための読解力
- 要求されているものに答えるだけの知識
- 時間内に解答するためのスピード
普段の学習で、こうした力を鍛えているのかどうか、日々の勉強を振り返って確認してみて下さい。